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学芸 平成14年12月/第88号 

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巻頭言●

副理事長意 見 と 文 句

副 理 事 長 吉 野 尚 也 
 もう40年も前のことである。新卒として勤めはじめて半年ほど経ったころ、職員会議で初めて発言した。その直後、校長先生から「君の発言は意見になっていない。あえて言うならば感想や文句に近い。職員会議は、あらかじめ示された原案に対してどうすればこの学校、すなわち子ども達にとって更に良いことなのか、その改善方法について知恵や考えを集める場です。感想や文句を言っているほど時間はないのです」と静かに指導された。
 何について何を発言したかなど内容は全く思い出せないが、新米教師の自分が衆目の前で静かだけれど厳しい指導を受けたことだけは記憶が鮮明である。
 それ以降、会議で発言する時の基本的な心構えとなっている。以来40年、これまで数多くの「会議」に臨んできた。人が考えたことに対して文句や感想を述べることは易しいが、練り上げられた原案に対し、具体的な改善方法や知恵を自分の考えとして述べることはなかなか難しいものである。いわんや、自分の話していることが意見なのか文句なのか本人自身が気付いていないことさえある。その結果、会議は踊り、無為な時間ばかりが過ぎて継続審議となってしまい、徒労感だけが残ったりする。
 自分が管理職になって、会議の始まる前に若き日に校長先生から指導を受けた経験を話しながら思ったことは、あの時の校長先生は、新卒教師の指導と共に、その時と場を的確に捉え、全職員に対して行った優れた指導だったことにようやく気付くのである。
 世の中に完全無欠なものなどそうあるものではない。物事の欠点やあら探しをするよりも、どうすれば現状がより良くなるのか、前向きな知恵を、自分の考えを「意見」として言える人間でありたい。
 東京学芸大学同窓会も、社団法人問題など大きな曲がり角を迎えているだけに、数々の会議で有為な意見を述べ一歩でも前に進める努力をしたいとも考えている。
 「教育とは、次代に生きる人間を教え育てることによって次代を創造する人間として最も基本的な営みである」とは学生時代に教育哲学の講義で学んだ忘れ得ぬ言葉である。
 多くの先輩から教えられ、訓練を受け、感化・陶冶されながら自分が少しずつ育てられたことに対し、今更ながらしみじみと感謝すると共に、次代に地道に伝える責務を感ずるこのごろである。

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