| 学芸 | 88号 | 海外情報      

学芸 平成14年12月/第88号 

目次
巻頭言
教育評論
支部だより
・本部だより
 総務部
 会計部
 研修部
 調査部
 広報部
 組織部
 スイッチオン
海外情報
役員等一覧
学校紹介
編集後記
 
海外情報●

モンゴルストリートチルドレンを守ろう・減らそう

岩 谷 栄 子(38年卒)
 モンゴルといえば、あの壮大な草原で、家族そろって、草を食む家畜の世話をしているのどかな情景が想起されます。しかし、自由市場経済の移行と共に、1992年ごろより、モンゴルのストリートチルドレンが社会問題となりました。ユニセフは9年間にわたって支援を続けてまいりました。
 今年の夏、ユニセフが支援しているモンゴルの「ストリートチルドレンを守ろう・減らそう」という事業が現地においてどのような状況か、全国の12名の先生方とともに20箇所の組織や施設を視察してまいりました。
 モンゴルの子どもたちを取り巻く現状
 1990年自由市場経済への移行から約10年経過し、民主化第二段階をむかえたモンゴルは、インフレも安定し、ある程度の経済的な発展をとげておりました。しかし、教育や保健行政までには反映されていない現状でした。
 また、1999年ゾドといわれる雪害で、家畜を失った遊牧民が仕事を求めて都市部へ流入し、全人口の47%の人々が都市に集中しているという現状でした。
 さらに貧困率36%という状況下で、教育面において働き手として男子中途退学者が増加傾向にあることが大きな課題となっていました。
 モンゴル教育システムと就学状況は、次の通りです。
 幼稚園‥3〜7歳30〜36%の子どもしか幼稚園教育を受けていない。
 小学校‥1年生〜5年生/8歳〜12歳/就学率は男女ほぼ同じ割合
 中学校‥6〜8年生/13歳から15歳/男子の中途退学が増え、男子の就学率が下がる。
 高 校‥9から10年生/16歳〜17歳/男の子の割合がさらに減る。
 10年生の後、職業訓練校や、大学などに進みますが、社会主義制度下では進学先が割り振られて自由に選べなかったが、自由化の下では職業訓練校への進学者が減り、熟練工の養成が難しくなっているとのことでした。大学進学者の七割は女性、三割が男性であること等、様々な課題等となっておりました。
 ストリートチルドレン
 日中路上でぶらぶらしているストリートチルドレンの数は約4,000人。そのうち親から離れて暮らしている子は約800〜1,000人。これに貧困層の子どもを加えると子ども全体の25%がケアを必要としているという実態です。今後増加の傾向にあるようです。
 子どもを保護する組織について
 福祉労働省の傘下のもと、国立こども委員会(実施機関)があり、そこが中心になり子どもの地位や状況改善のための様々な施策を展開していました。
 2001年10月、国立こども諮問委員会が開催され、子ども支援の立案、パートナーシップ、集中的な基礎社会サービス、コミュニティー参加と製作提言等について協議され、具体化に向けて取り組みを勧めておりました。
 私達一行は、集中的な基礎社会サービスとして取り組んでいる住所身元確認センター、一時収容センター、家族支援センター等の実態を視察させていただきました。
 身元確認保護センターについて
 1996年知事の命を受けて、警察と連携して身元確認保護センターができました。
 警察・地域の人、ソーシャルワーカー達が精力的に子どもたちの保護のために活動していました。
 毎夜、巡回しながら、ストリートチルドレンを捜しては説得をし、保護センターに連れてきて、医療的なケア(70%の子どもが何らかの病気を持っている)、食事、入浴、服装の世話をします。毎日50人収容できますが、身元を確認し、親元に帰します。0歳から17歳の子どもが対象です。
 親元が分からない子や家庭の事情で帰せない子どもについては、その子に適した保護センターに配属します。
 NGOの支援が大きく、1999年には400人のストリートチルドレンのうち300人を親元に帰すことに成功しました。今まで延べ12,500人の子ども達を保護したとのことでした。
 子ども保護センター
 ここでは、社会問題専門家とよばれる職員が中心となり、医師、カウンセラー、弁護士などの協力を得ながら、活動を進めていました。時には、売春地区やマンホールに直接出かけて行って子どもたちを保護し、シャワーで体を洗い、服を与え、食事をさせながら、気持ちをほぐし、子どもたちとの対話活動をしながら、ケアを進めています。
 家族の相談活動もすすめ、保護センターの活動を紹介しながらセンターが問題解決のできる場所であることを啓発していました。子ども達の両親を一斉に集め、カウンセリングを行い、支援活動を粘り強く続けており、その中で、両親や家族の中にも、子どもの問題をどう予防していけばよいのか、知恵を出しあおうという意識も高まってきているようです。
 Child to Child プロジェクト
 子ども自身が自分たちの力で取り組むことができないか考え、全国の学校の子ども委員会が組織され、@貧困家庭の子どもの支援A身体障害児への支援B少年院・刑務所の子どもへの支援C犯罪の可能性をもつストリートチルドレンに対する取り組みD虐待を受けている子どもや精神的ハンディキャップをもつ子どもへの支援 の方針を掲げていました。そのなかで、全国放送された感動的な取組みを紹介してもらいました。
 実際に活動をしている生徒諸君から直接話を聞くことができました。概要は次の通りです。
 ☆ エルデンゲレルさん(第16学校8年生15歳)のお話
 エネレル基金という活動をやった。活動に参加してとてもいい勉強になった。貧困家庭の子どもを助けようと校内で調査をやったら、全生徒数1,678人のうち46%が片親か孤児だった。大人が子どもを助けるが、子どもが子どもを助けても良いと考えた。自分たちでできることは何かを考えた。お金をくれる人を探すのでなく、自分たちのまわりにあるお金になるものは何かを考えた。捨てた骨、ビン、缶、ビンのふたなど、いろいろあった。
 中学校の子どもたちがこうした廃品回収にみんな参加してくれた。こうして250ドルのお金を集めた。10人の子どもがいる母子家庭(子どものうち5人が第16学校の生徒)にみんなの心がこもっているゲルを送った。
 ゲルを贈られた家庭の母親ツロンツェツェグさんから、「第16学校の生徒の皆さんに心から感謝している。生きる希望を与えてくれた。今、手作り品を売ったりして経済的自立の努力をしている。」と報告がありました。
 キャンプ場での学習
 様々な保護センターで暮らしている子どもたちが6月下旬から約2ヶ月キャンプ場で生活を共にしていました。モンゴルの夏は40度以上の猛暑になるので、このようなカリキュラムが組まれているようです。
 そこはウランバートルから6km離れた自然環境のすばらしいところにありました。
 一箇所、60人から100人のこどもが収容可能で、音楽や体育の4人の教師とコックさんが配属されていました。
 2ヶ月間健康なからだ作りとプログラムに沿った教育活動が展開されていました。
 全国の作文コンクールで表彰されたり、音楽学校の入学資格を授与されたり、絵画の部門で優秀な成績を収めたり……と多岐に及んでその成果が花開いていました。厳しい環境にいながらもみんなとてもすばらしい才能をもっているのです。と先生が悲しげに、また誇らしげに語られたことばが胸にずしりと残りました。

| 学芸 | 88号 | 海外情報