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学芸 平成14年12月/第88号 

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教育評論●

東京学芸大学の近況と今後のこと

東京学芸大学長 岡 本 靖 正
 法人化、再編・統合等、国立大学をめぐるさまざまな問題が新聞等で報道されており、同窓会の皆様も、東京学芸大学が今後どうなっていくのか、心配しておられることと思います。創立五十周年を迎えた平成11(1999)年前後から今後のことについて、この紙面をおかりして、ご報告いたします。

少子化と教員需要の低下に伴う学部改組

 わが国の出生率は、いわゆる第二次ベビーブームさなかの昭和48(1973)年以降ゆるやかに下降し、昭和50年代半ばには、それが幼稚園・小学校の入園・入学者数に現れ始め、近い将来の教員需要への影響が明らかになってきました。国立教員養成系大学・学部の新規卒業者の教員就職率は、昭和55年3月卒で75%であったのが、その後漸次下がり始め、60年には65%になっていました。昭和61年2月に、文部省は「国立の教員養成大学・学部の今後の整理に関する調査研究会議」を設けて問題の検討を開始し、その報告を承けて進められたのが、教員免許状の取得を卒業要件としない、いわゆるゼロ免課程(新課程)の設置でした。本学も、昭和63年度に、それまですべて教員養成過程であった1,215名の総入学定員のうち380名を割いて、4課程16専攻から成る教養系課程を設置し、教育系五課程(教員養成課程)の定員は835名となりました。 陸上競技場脇の桜
 しかし、それから10年を経て、少子化とそれに伴う教員需要の低下はさらに進み、平成10年度から12年度までの3年間に、国立大学の教員養成課程の入学定員を三分の二、約5000人を削減する計画が実施されました。その結果、昭和61年度の約2万人から新課程の設置により平成9年度までに15,000人となっていた入学定員が、平成12年度には、1万人となりました。本学は、昭和63年に続いて再び学部の改組再編を行い、平成12年度からは、教育系3課程590名と教養系6課程475名、合計1,065名といたしました。

大学院の整備・拡充

 大学院については、昭和41年4月に、教員養成系大学・学部として初めての修士課程(教育学研究科)が本学に設置されました。全国的に見れば、2年後に大阪教育大学に、それからさらに10年後の昭和53年に愛知教育大学に、修士課程が設置されています。この年、現職教員の再教育を主たる目的とする兵庫教育大学と上越教育大学が、3年後に鳴門教育大学が、開学しました。この頃から既設の大学・学部でも設置が進み、平成8年に、全国48の教員養成系大学・学部において修士課程の整備が完了しました。この年、本学と兵庫教育大学をそれぞれ基幹大学とする2つの博士課程(連合学校教育学研究科)が設置されました。修士課程が設置されてから30年後のことであります。
 東京学芸大学連合学校教育学研究科は、埼玉大学・千葉大学・横浜国立大学の教育学部(横浜国立大学は平成十年度に教育人間科学部に名称変更)と本学との連合による、後期3年のみの独立研究科で、9講座から成る1専攻(学校教育学専攻)の博士課程です。入学定員は20名で、平成11年3月に最初の学位記授与式が行われ、現在までに、41人が課程博士の学位を受けています。 美術科学研究棟
 この間、修士課程についても、教育職員養成審議会の第二次答申(「修士課程を積極的に活用した教員養成の在り方について―現職教員の再教育の推進―」平成10年10月)の提言を先取りする形で、平成9年度に、現職教員が大学院に学ぶ機会の拡大を図りました。1つは、大学院設置基準第十四条による教育方法の特例に基づく修学(教育委員会等からの派遣制度により、1年次は在職校を離れてフルタイムで授業・研究に専念し、2年次は在職校に復帰し、勤務しながら夜間の時間帯、土曜日等において、修士論文等の指導を受ける)を容易にしました。ただ、地方財政の悪化のため、派遣枠の大幅な拡大が難しいことから、現職教員が在職のまま修学できるように、既設の12専攻に昼夜開講コースを開設すると同時に、専ら夜間に開講する総合教育開発専攻を新設しました。この専攻は、増大する海外帰国の児童生徒および外国人児童生徒の教育、深刻化しているいじめや不登校などの生徒指導にかかわる問題への対応、新しい情報機器・メディアの学校教育への活用、全地球規模でますます重要になりつつある環境教育への取り組み等、教科の枠を越えた学校教育の今日的課題に対応する4つのコース(多言語多文化教育・教育カウンセリング・情報教育・環境教育)から成っています。 キャンパス中央の噴水広場
 また、現職教員の方々の通学の便を考えて、平成12年度後期から、文京区の附属竹早中学校と世田谷区の附属高等学校の二か所にサテライト教室を開設いたしました。さらに、平成13年度からは、大学院設置基準の改正を承けて、標準修業年限1年の短期特別コースを開設しておりますし、授業料面の制度改正が行われましたので、いま、4年間ほどかけてゆっくり修学する長期履修学士制度も計画しております。修士論文と並んで、課題研究の成果を学位論文として位置づける学内の改正も進めております。教育公務員特例法の改正により、大学院修学休業制度も創設され、現職教員の方々が自発的に大学院に学ぶ環境は次第に整備されつつあります。学校現場で先生方の大学院修学を容易にする環境作りを図り、本学修士課程を積極的に活用して、これまでの実践を活かしつつ、資質能力の1層の向上を目指していただきたいと思います。

施設整備等

 教育学部附属の教育研究施設として、特殊教育研究施設、教育実践総合センター、環境教育実践施設が設置されていることは、ご存知のことと思います。教育実践総合センターは、平成9年4月にそれまでの教育工学センターと教育実習研究指導センターを統合改組し、教育臨床開発指導部門を加えて新センターとして発足しました。全国共同利用施設として、国際教育センター(平成14年4月に海外子女教育センターを改称)と平成12年4月に新設された教員養成カリキュラム開発研究センターがあります。ご協力とご活用をお願いいたします。大学院修士課程における現職教員の方々の修学形態が多様化したことに対応して、現職教員研修支援センターも設置しております。
 平成7年3月のキャンベラ大学(オーストラリア)と交流協定を結んだのを皮切りに、外国の大学との交流も進み、現在、8か国26大学と学術交流協定を締結しています。毎年、20名近い外国人研究者が滞在し、20数か国から研究者・教育関係者の来学があります。留学生も、本年10月現在で、30数か国から503名が学んでいます。平成10年4月に留学生センターが設置されました。宿舎としては、小金井キャンパスに国際交流会館、東久留米に国際学生宿舎があり、旧板橋大学小平分校跡地にも諸大学共用の宿舎があります。 国際交流会館
 キャンパスも、草創期以来さまざまな方々の努力が重ねられて、桜に加えて欅も見事な並木となり、半世紀の歴史にふさわしく緑豊かに整備されてきました。講義棟や研究棟など、施設の整備も順次進められております。創立50周年記念に伴い、5月31日の式典前に人文科学系研究棟3号館、W(講義)棟、第二むさしのホールは外壁を改修しました。主力の講義棟N棟・S棟は改築され、その後留学生センター・学生センター棟によって結ばれました。生活科学学科研究棟は改築され、技術科研究棟に次いで、美術学科研究棟も新築のように改修されました。附属学校も、竹早小・中学校は改築、世田谷小学校、大泉小学校は改修されています。

国立大学の法人化

 平成12年7月に発足した「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」は、昨年9月に中間報告を出して各界からの意見を聴取した後、本年3月26日、報告書「新しい『国立大学法人』像について」を出しました。国立大学協会は、この間、組織運営、人事、評価、財務会計等の専門委員会を設置し、その委員長等が調査検討会議の委員を務めるなど、法人化の制度設計に加わり、4月に臨時総会を開いて、報告書を大筋において承認しました。
 組織運営については、教学と経営を分離し、主として教学に関する事項を審議する、学内の代表者から成る「評議会」と、経営に関する事項を審議する「運営協議会」、学長の決定に先立って重要事項を決議する「役員会」を置き、後二者には学外有識者が参画することになっています。6年間の中期目標・中期計画をつくり、その結果を「大学評価委員会」が評価し、評価結果を資源配分に反映することになっていますが、目標は大学(法人)が提出する原案を尊重して、文部科学大臣が策定し、 それに基づく大学の計画を大臣が認可することになっておりますので、現在は、どの大学も中期目標・中期計画の原案づくりに追われています。教職員の身分が非公務員型となるのは、大きな変化です。平成15年1月に始まる通常国会に法案が提出され、その成立を経て、平成16年4月に法人に移行するというのが、いま示されている日程です。

国立大学の再編・統合

 昨年6月に、文部科学大臣が「大学(国立大学)の構造改革の方針」を公表しました。それは、(1)国立大学の再編・統合を大胆に進める、(2)国立大学に民間的発想の経営手法を導入する、(3)大学に第三者評価による競争原理を導入する、という3つの柱から成っています。第二の柱には、「教員養成系など」が、「規模の縮小・再編(地方移管等も検討)」の例示としてあげられ、第二の柱には、「国立大学の機能の二部を分離・独立(独立採算性を導入)」の対象に附属学校が例示されています。 留学生センター等棟で結ばれた講義棟
 前年の平成12年8月に、「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」が発足していました。国立大学も教員養成課程の入学定員5,000人削減とそれに伴う改組再編の結果、全国48の教員養成系大学・学部のうち、7大学において新課程の入学定員が教員養成課程のそれを上まわり、5大学において等しくなりました。また、併せて、9大学において、教育学部から教育文化学部、教育人間科学部、教育地域科学部、文化教育学部、教育福祉科学部へと学部名称の変更が行われました。教員養成課程の入学定員についてだけ見ると、16大学において100名以下、32大学において200名以下となり、100名を少し上まわる規模の教員が教員養成課程と新課程の両方の教育に当たる現状では、教員養成の弱体化を招くこと、大学院修士課程を含めて、今後さらに求められる新たな課題に十分対応できないことが懸念されました。そうした背景を踏まえて、長期的観点に立った今後の教員養成の在り方について検討することが「在り方懇談会」発足の趣旨でした。
 「大学(国立大学)の構造改革の方針」が出されたのは、懇談会が、教員養成系大学・学部の学部、大学院、附属学校の果たすべき役割について検討し、組織体制の在り方の議論に入りかけた頃でした。そのため、始めに再編・統合ありきではないことを確認して出発したはずでしたが、組織体制の在り方の方向が制約されたかっこうになりました。ただ、わが国の教員養成の今後の在り方を長期的に見た場合、現状のままでよいと言えないことは明らかです。大学院における現職教員の修学機会を全国でどう公平に確保するかに関する議論は不十分でしたが、県境を越えた大学・学部間の再編・統合によって、教員組織と入学定員の規模をある程度大きくし、「教員養成担当大学」になる大学・学部と、教員養成をやめて、新課程の実績を活かした新組織をつくる大学・学部に役割を分化させる方向が、組織体制に関する在り方懇談会の提言の内容となりました。
 在り方懇談会の報告書(平成13年11月)の内容を受けて各教員養成系大学・学部は、地域の事情による差はありますが、学内で議論するとともに、近隣の大学・学部とさまざまな話し合いを行ってきました。ある方向を合意し合うところまで協議を進めた大学があること、大学間の話し合いはついたが県や同窓会の反対で話し合いが中断している大学があることは、新聞報道でご承知にことと思います。文部科学省は、当初、法人化へ向けて、平成14年度のうちに再編・統合の全国マップをつくると説明しておりましたが、現在はその見込みはありません。

東京学芸大学の今後のこと

 本年10月1日に、山梨大学と山梨医科大学、図書館情報大学と筑波大学がそれぞれ統合し、新生山梨大学、筑波大学が発足しました。来年10月には、10組20大学が統合を予定しています。
 本学は、大学単位の統合は考えておりません。そして、先に述べましたように、本学には教員養成課程の入学定員590名に対して475名の新課程がありますが、教員養成担当大学には、一定の領域を除いて、原則として新課程を置かないというのが、懇談会の提言の方向であり、また、文部科学省は、全国の養成規模1万人体制は今後も維持する方針を示しておりますので、大学の中だけで自己完結的に改組を行うことができないところに難しさがあります。今後、教員養成担当大学として中心的な役割を果たしていくことを学内で確認し、そのための教育研究の充実の方策を検討すると同時に、これまで山梨大学および横浜国立大学のそれぞれ教育人間科学部と話し合いを重ねてきています。両大学・学部とも、まだ結論を出しておられません。今後も引き続き話し合いを続けますが、平成16年度の法人化前に具体的な方向が出される可能性は少ないと考えております。目下は、将来像を明確に描きつつ、現実的な6年間の中期目標・中期計画の原案づくりに全学の知恵とエネルギーを集めています。
 大学評価・学位授与機構が、全大学(国立大学)共通の評価事項と平行して、分野別教育評価・研究評価を実施していることも、新聞等でご存知のことと思います。平成14年度に教育学系の分野別評価が実施されており、教育評価と研究評価それぞれ6機関が対象となっており、本学は研究評価の対象として、7月末に自己評価報告書を提出し、現在ヒアリングを終えたところです。
 かねてから総会等でお願いしてきたことですが、法人化へ向けて、東京学芸大学の教員養成課程、教養系課程の全卒業生を含む全国規模の同窓会の組織が急がれるところです。平成15年11月のホームカミングデーにおける発足を目指して、学内関係者で検討しております。東京学芸大学同窓会には、これまで何かにつけてご支援。ご協力をいただき、大学として深く感謝いたしております。法人組織のことなど、難しい問題をかかえておられることは承知しておりますが、法人化を経て、本学がさらに発展するために、格段のご理解とご協力を賜りたく、あらためてよろしくお願い申し上げます。

対鹿島アントラーズ戦
  若獅子たちのチャレンジ!
母校サッカー部
  初出場にして対鹿島アントラーズ戦

 第82回天皇杯全日本サッカー選手権大会に母校の蹴球部が初出場。初戦(12月1日)は対八戸大学に5対1で圧勝。8日の第二戦、j2のモンテディオ山形を破った群馬FCホリコシ戦では、「目指せ鹿島スタジアム!」を合言葉に岡本靖正学長をはじめとする教職員とサッカー部員による応援団が、凍てつくJヴィレッジスタジアム(福島)で熱い声援を送った。前半、何度もの危機を冷静にしのぎ、後半に入るとゲームの流れをつかみ1対0で勝利した。身体を乗り出し感嘆の声。寒さを忘れた声援の後、互いに手を取り合って祝福しあった。15日はJリーグの鹿島と対戦する。

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